「大変化」、を一読した。著者は、エコノミストの伊藤元重氏。 それにしても、ずいぶん、抽象的なタイトルではある。が、中身は。 国際経済学から見た日本経済と、その発展の可能性について、かなり具体的に踏み込んだ提言がなされていた。 世界最速進行の少子高齢化、巨額の財政赤字、格差社会、医療崩壊、ニート・フリーター問題、教育の荒廃などなど。 数え上げるとキリがないほどのマイナス材料を前に、私たちは。日本経済の未来に対して、なるほど悲観的にならざるを得ない。 が、すべての現象に、「光」と「影」の二面性があるとするならば。 経済現象の、影の部分のみに目を奪われるだけでなく、光の部分はどこか、そこに着目した将来のビジョンが描けないか。 というのが、私が理解した本書の趣旨。そして、氏によると。 日本の未来に大きな活力をもたらすキーワードは、��技術革新」と「グローバル化」、であった。 特に、第8章日本の食糧の未来を考える、には考えさせられた。ずばり、日本農業の可能性についての示唆である。 ここでも、2つのキーワードからの検証を行なうわけだが、それは私が日頃抱いていたイメージに非常に近いものであった。 この場合、技術革新というのは栽培技術とか、研究技術というより、経営技術に近い。あるいは、マーケティング技術というべきか。 平たく言うと。 日本農業の技術革新とは、農業のビジネス化、であり、そのためには、農業を強くするというよりも、農家を強くする政策こそ肝要、ということだ。 また、グローバル化については、文字通り、世界と競合するということである。 それは、一義的には輸入自由化を意味するけれども、だからこそ、技術革新を成し遂げる必要があるし、永遠に保護が通用するものでなく。 山形のサクランボ農家は、その格好の好例であろう。��佐藤錦」は、外国産がいくら入ってきても決して揺るがないのである。 農業が、国の根幹をなす産業であることは論を待たない。だからこそ、停滞と衰退が叫ばれる現状を突破する将来ビジョンが、必要なのだ。 もちろんその他の章では、農業以外にも触れられ、特に、カギを握るのが��DPの約8割を占める非製造、というのは、その通りであろう。 いずれにしても、大変化、である。世界が大きく変わろうとするその中で、日本も、愛媛も、変わろうとしている。 翻弄されてジリ貧となるか、見極めて活力につなげるか、今、大きな岐路に差しかかっていると、著者はいう。 世界の変化に遅れないようスピード感を持って、それを見極める知恵と、行動力を磨いてまいりたい、と思う。