この人は、どこまで強いのか。谷 亮子選手である。 リオデジャネイロで行われた柔道世界選手権、女子48㎏級で、通算7度目の優勝を果たしたのである。この、7度というのは、男女を通じて、大会史上初の快挙である。 田村でも金、谷でも金、そして、ママでも金、この名ゼリフを、見事に有言実行してのけた。 2年間のブランクというのは、アスリートにとって致命的な、ロスタイムであろう。「けいこを1日休むと、取り戻すのに3日かかる」とは、先日お亡くなりになった元横綱琴桜の言。 その至難を成し遂げたのは、何だったか。 4月に行われた復帰戦である全日本選抜体重別選手権・決勝での、あの敗戦の悔しさではなかったか。 いとも簡単に手のひらを返すマスコミの冷酷に、出産・育児・家事という主婦と母の仕事をこなしながら、どれほど辛く苦しかったことであろう。 常人には、推し量ることのできない悔しさでいっぱいであったろう。だから、勝つしかなかった。 その、勝利への執念が、間違いなく世界一だったからこそ、勝った。そんな谷選手の金メダル獲得は、全国の働くお母さんに、大きな勇気と希望を与えたに違いない。 そして、わが愛媛にも、朗報だ。本県出身の棟田康幸選手が無差別級で、見事、優勝を成し遂げたのである。 不振が続く男子勢の中で、ただ一人の金メダル。しかも、最後の最後、その桁違いの重圧の中で、すべて1本勝ち、の完勝である。 かくして、TVの前で。両選手に、世界を制する精神力のとてつもなさ、を学んだ気がした。