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2024年 9月定例会(9/20)

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四国新幹線の導入について(2024年9月定例会)

最後に、四国新幹線の導入についてお伺いいたします。

先月21日に四国新幹線整備促進期成会第6回東京大会が開催され、私も出席しました。2017年の第1回から数えてコロナ禍を挟み、今回で4回目の出席となります。

四国4県から国会議員をはじめ政治、経済、自治体等600名を超える関係者が一堂に会し、四国新幹線の早期整備を訴える決議を採択するとともに、“四国だけ新幹線がない現状に、我々は怒ろうではないか”との気勢を上げて、大会は終了しました。

もちろん、新幹線は怒ってできるものではありませんが、1973年に四国新幹線が基本計画路線に策定されてから、半世紀以上経て進まない理由は何なのか?

そんな思いで、帰県後、「新幹線の生みの親」といわれる本県出身で第4代国鉄総裁の十河信二伝「夢の超特急ひかり号が走った」を閲読しました。帯には“そんなものは必要ないという政治的圧力と世間の批判、すべてを乗り越えて”、“多くの障害を押し切って新幹線を走らせた”とあります。

一読し私は、“十河なくして新幹線なし”、と痛感させられました。

昭和30年代という人口が増え続ける高度成長期の真っただ中にあり、政府が100%出資する天下の3公社の1つ“国鉄”という大企業の最高責任者の立場にあったから実現できたのだろうと思っていましたが、十河以外、余人をもっての実現は、おそらく不可能ではなかったか、と感じたのです。

国家財政的にも、政治的にも、国鉄内の組織的にも、世論的にも、あらゆる状況が今よりはるかに厳しい状況の中、国鉄総裁に就任した当時71歳の十河は若い職員にこう言ったそうです。

「私が“弾丸鉄道、即ち、新幹線”に血道を上げているので、君たちは私の頭がおかしいと思うだろう。だが、このままでは国鉄は道路と空にやられてしまう。私は君たちに“夢”を与えてやりたい」と。

十河が語ったのは、“夢”でした。

当時、国鉄主流の論調は「財政や施設の状況からみて新幹線は無理」というものでしたが、十河はこれに対し、「それが陥ってはならない政治的な考えだ。経済の見通しが先ではない。交通機関が経済をリードするのだ」と反論。

会議でも情熱は留まることを知らず、「国鉄は将来どうあるべきか、という理想案を検討してほしい。東京~大阪間を8時間で走るか、4時間で走るかということが、国鉄の経済にどう響くかを考えると同時に、日本の経済にどう響くかを考えねばならない。この先、スピードが非常に大切な問題になる。」

だから、新幹線が必要だと。

私はそうした十河総裁の生きざまに触れ、彼が志向する未来への確信に強い感銘を受けました。

少子高齢化により加速する人口減少、なかなか歯止めが掛からない若者の流出、減便や廃線が続く地方公共交通など、私たちが直面する厳しい現実を踏まえると、四国新幹線という巨大プロジェクトは現実的ではなく、導入後の維持は極めて困難といった意見があるのは当然です。

しかし、今の延長線上とは異なる“創造的な未来”について、十河総裁ならどんな“夢”を語るでしょう。

愛媛と四国に人と金と情報を呼び込み、世界に市場を広げ、新たな雇用と産業を創出し、地域経済の発展をもって人口減少や流出に歯止めをかけていく、激甚化する自然災害から命を守り、子孫に故郷と未来を引き継いでいく、そのために、断じて四国新幹線は不可欠なのだ。そんな十河氏の声が、春雷を伴って聞こえてきそうな気がします。

四国新幹線については、本県議会においても様々な角度から取り上げられ、県は、新幹線の導入効果や魅力の発信、NHK連続テレビ小説の放映誘致などの取組みを重層的、積極的に進めてこられたと承知しており、関係各位に対しまして心から敬意を表したいと思います。

一方、知事が言われる“四国の鉄道ネットワークはどうあるべきか”という、国鉄時代から分割民営化を経て今に至る“そもそも論”について、これまで国やJR四国、地方自治体間でかみ合った議論や合意形成は十分に進んでいるとは言えません。

四国新幹線整備促進期成会に入っていない岡山県における建設費等も含めた理解と協力や並行在来線の経営分離等に関する沿線自治体とのコンセンサス等が十分に得られていない点や、誘致に積極的なのはほとんど政財界のみで、一般市民・県民には関心が薄い、といった冷ややかな見方があるなど、様々な指摘があることも事実ですが、私は、四国新幹線の導入に向けたこうした課題や指摘を1つ1つ丁寧にクリアしていくことが、真の機運醸成に繋がっていくと思います。

中村知事におかれましては、2019年9月定例会で明比議員の質問に対し、“リニア中央新幹線の大阪延伸が予定されている2037年を四国の新幹線開業の目標として、オール愛媛、オール四国で必ずや道筋を付けたい”と答弁しており、大変心強く感じたところでございますが、引き続き、オール愛媛、オール四国で、多くの関係者とともに、国やJR四国、岡山県など幅広いステークホルダーと意形成を図りながら、そして多くの県民に向けて、かつて十河総裁が成したように、四国新幹線がもたらす愛媛・四国の“未来”と“夢”について大いに語り、“希望”の裾野をさらに広げてほしい、と思うのであります。

そこで、お伺いいたします。

知事は、四国新幹線導入に向けた課題をどう認識し、どのようなアプローチで解決を図っていくのか、また、リニア中央新幹線の大阪延伸に合わせた開業目標について、あらためて現在の決意をお聞かせください。

以上で私の質問を終わります。ご清聴誠にありがとうございました。

<答弁概要:中村知事>
県出身の十河信二氏が心血を注いだ東海道新幹線開通から60年の月日が経ちますが、四国が唯一の新幹線の空白地帯となっていることは、非常に残念であります。

昭和62年の国鉄分割民営化当初から、厳しい経営が続くと想定されていたJR四国にとって、民営化の前提であった人口増加、経済成長、高金利での基金運用による経営の安定化の3条件が全て崩壊している中、収益の柱となる新幹線事業が実現されなければ、四国の鉄道ネットワークそのものが消滅しかねないと危惧をしております。

四国新幹線実現に向けては、その必要性や経済効果等への理解促進と、本県をはじめ四国全体の機運醸成が課題と認識しており、県新幹線導入促進期成同盟会が中心となって、ファミリー層を対象としたイベントやプロモーション動画の放映等を実施しているところであります。

さらに、6月から開始した署名活動では、これまで築いてきたネットワークをフルに活用してPR活動を展開し、約3か月で四国内外から5万筆を超えるなど、大きな盛り上がりを見せているところでございます。

また、多額の建設費や並行在来線の運営方法等将来的な地元の財政負担も課題でありますが、新幹線ネットワークは、本来全ての国民が等しく享受できるサービスであるべきと考えており、国に対して、法定調査の早期実施に加え、予算の拡充や新たな財源の活用により、新幹線整備の仕組みを抜本的に改革するよう強く要望しているところでございます。

リニア中央新幹線大阪延伸と時期を合わせて四国が新幹線で繋がることで広域経済圏が形成され、四国創生の起爆剤になりますことから、今後とも、経済界や関係自治体との連携をさらに強化して、「四国フル規格新幹線」の早期実現に向けて粘り強く取り組んで参りたいと思います。

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