最後に、奨学金返還支援制度の拡充についてお伺いします。
私は2015年9月定例会で、若者の地元企業への就職を促進・支援するため本制度の導入を提言し、昨年2月定例会におきましても、公明党独自で行った県内若者へのアンケート調査結果を踏まえ、本制度の持続的拡充を求めてまいりました。
昨年の答弁では、2018年度の制度導入以降、ものづくり産業、IT関連、観光の3分野で205社に登録企業として参画頂き、県内の43社に69名が就職し、県内企業の人材確保や若年者の県内定着に一定の成果が上がっている、とのことでありました。
しかし、未だ「奨学金の返済が苦しい」という負担軽減を求める声は多く、コロナ禍以前となる2019年度末の全国の返還延滞者数は34万6000人、延滞債権は約5400億円にのぼり、その主な理由として、家計の収入減や支出増が挙げられ、延滞が長引く背景には、本人の低所得や、延滞額の増加が指摘されています。
こうした利用者の負担軽減に向け、返還を「肩代わり」する支援制度が本制度であり、2023年6月現在で全国695市町村が、本県では宇和島市や新居浜市など、7市町が導入済みであり、今後はぜひ、未実施の自治体にも制度導入が進むよう期待したいと思いますが、その際、留意したいのは、支援対象者の“範囲”と“要件設定”であります。
導入済の自治体でも、“奨学金は、成績優秀者に対して行われるもの”というイメージが未だに強いことや、対象者の設定要件のハードルが高いという現状が指摘されています。
例えば、ある自治体では、7項目から8項目の要件をすべてクリアしなければならないため、結果として該当する対象者がおらず、ほぼ毎年予算が執行されないなど、こうした残念な事案が全国的には少なくないとのことで、政府が2022年に行った制度改訂では、“対象要件を緩和して対象者を増やし、地方創生や若者の負担軽減の実効性を上げること”に主眼が置かれました。
対象要件の緩和と対象者の拡大について、例えば鳥取県では、県内の製造業、建設業、建設コンサルタント業、旅館ホテル業、IT企業、ここまでは本県と同様ですが、それ以外に農林水産業、薬剤師や、民間の保育士・幼稚園教諭、理美容師、歯科技工士の職域という風にすそ野を広げ、対象範囲には、正規雇用で県内就職を希望する大学生、大学院生以外にも、専門学校、高専生、短大生に加え、35歳未満の既卒の方も含まれます。
本県にとって、人口減少による深刻な人手不足は、どの産業にも共通する喫緊の課題であり、若者の県外流出に歯止めをかけるためには、“待ったなし”で、先進事例を含めたあらゆる施策を総動員するべきあり、その意味で私は、本県の奨学金返還支援制度は、農林水産業、医療・福祉・介護や教育など、あらゆる分野を対象に、部局横断的に取り組み、学校種別を追加し、既卒も含めた形で思い切って門戸を広げるべきと考えます。
さらに、各自治体にも協力を促し、対象要件の大幅な緩和と、県外在住出身者への積極的な周知等に連携して取り組み、“オール愛媛”で、若者の県内就職を、より一層促進・支援することで、人口減少の抑制と地方創生の実現に繋げて頂きたいと思うのであります。
そこで、お伺いいたします。
本県の奨学金返還支援制度について、深刻な人手不足が続く現状と将来の見通しを踏まえ、できるだけ多くの分野に対象を広げ、要件緩和も含めた制度の拡充を図るべきと考えますが、見解をお示しください。
また、制度未実施の県内市町も巻き込みながら、“オール愛媛”で、若者の県内就職の促進・支援に取り組んで頂きたいと考えますが、併せてご所見をお示しください。
以上で私の質問を終わります。
ご清聴、誠に有難うございました。
〈答弁概要:経済労働部長〉
本県の奨学金返還支援制度は、限られた財源の中で、地域産業を支える企業の中核人材の確保を効果的に支援する観点から、県内企業のニーズや各産業における個別の支援状況等を勘案し、就職先となる登録企業の産業分野を「ものづくり」、「IT」、「観光」の3分野、支援対象を大学生及び大学院生として実施しているものでございます。
これまで、教育機関や経済団体等と連携した制度周知やSNSを活用した積極的な広報に取り組み、令和2年度以降、113人を県内就職に繋げるなど着実に成果を挙げているところでございます。また、県内企業で不足するIT人材確保のため、産業分野を限定せず、既卒者等も対象としたIT人材確保枠を昨年度新設し、地域の実情を勘案した見直しを図ったほか、市町に対しましては、制度の創設・拡充に向けた検討を促すなど、奨学金返還支援による若者の更なる地元定着促進が図られるよう取り組んでいるところでございます。
全国で深刻な人手不足が続き、他県でも制度の導入や改善の動きがある中、本県におきましても、地元産業界の声や他県事例を踏まえ、要件緩和等の見直しも念頭に置きながら制度の成果検証に努めますとともに、引き続き、各市町とも必要な情報共有を行うなど、産学官で緊密に連携しながら、若者の県内就職促進に取り組んで参りたいと考えております。