最後に、起立性調節障害についてお伺いします。
朝、なかなか起きられず、あるいは目覚めても倦怠感や頭痛、めまいや吐き気などで学校に行けず、1日中家で過ごし、夕方になると不思議と元気になるものの、夜は寝つきが悪いため、次の朝もなかなか起きられない。怠けやサボりではないけれど学校に行けない。つらいのに誰もわかってくれない。そんな悩みを抱えた子どもたちがいます。
そうした不調の要因の1つとされるのが起立性調節障害であり、私は、保護者からのご相談で初めて、その存在について知りました。
日本小児心身医学会によりますと、起立性調節障害は、主に思春期に好発する自律神経系の不調からくる身体の病気で、小学生の約5%、中学生の約10%がこの障害を抱えており、10~16歳で多く、男子より女子がやや多いとされます。
近年、起立性調節障害と診断される子どもが増えており、現代の夜型社会や複雑化した心理的・社会的ストレス、長引くコロナ禍での運動不足等がその背景にあると言われています。
片頭痛や過敏性腸症候群などの機能的疾患、自閉スペクトラム症などの発達障害との合併も多く、精神的なストレスが悪化し重症化した場合には日常生活に支障をきたし、不登校やひきこもり、いじめへと発展するなど、学校生活やその後の社会復帰に大きな支障となることが懸念されています。
ご相談を頂いた保護者からは、お子さまの深刻な症状に直面した際、“心療内科など複数の医療機関を回ったが、風邪や他の疾患と診断されることもあるなど、起立性調節障害として適正な治療に出会うまで、出口の見えない不安を余儀なくされた”とのご心痛を伺いました。
同時に、私は何としても、起立性調節障害という聞きなれない疾患について理解を広げ、周囲の無理解に苦しむ子どもや保護者をお支えしなければと、強く決意しました。
全国の先進事例を調べますと、岡山県教育委員会では独自にガイドラインを作成し、その中で、起立性調節障害について相談できる医療機関を自治体別にリスト化するとともに、県下の教育相談窓口や参考資料・サイトなどを掲載し、悩んだ保護者ができるだけ迷わないような配慮がなされています。
そこで、お伺いいたします。
起立性調節障害に苦しむ子どもや保護者を守るためには、この疾患に対する認識を深め、学校や家庭など周囲がいち早く子どものSOSに気づき、保護者の方が出口の見えない不安を抱えたまま複数の医療機関を回ることなく、早期診断につながるような環境づくりが重要となると思いますが、このことについて県教育委員会としてどのように取り組んでいくのか、ご所見をお示しください。
以上で私の質問を終わります。ご清聴誠に有難うございました。
〈答弁概要:教育長〉
起立性調節障がいは、「朝起きにくい」「午前中に症状が強く出る」等の傾向が見られ、学校生活への影響や不登校との関連性も懸念される疾患であり、本年5月末時点で本疾患と診断された県立学校の生徒は、全体の0.8%に当たる218名、また、診断はされていないが同様の症状がある者も6.2%に当たる1,608名が確認されております。
学校では、保健調査や保護者からの申し出等により支援の必要性を把握した生徒について、担任や関係教職員が主治医の指示事項を含めた情報を共有し、保健室休養や登校時間調整など生徒の体調に合わせた学校活動が行えるよう措置を講じているほか、希望者には学校医が面談し、専門医の受診も含めた助言を行っております。また、学校の「保健だより」や校内ポスター等により本疾患の特徴や対応策等について周知を図るとともに、研修等を通じて支援の中核を担う養護教諭の理解促進にも努めているところであります。
県小児科医会会長によりますと「本疾患は心身症の一つとして古くから確立されているものの、その臨床像は非常に幅が広いなど対応が難しい側面もある」とのことであり、また、不登校の3~4割に本疾患が関連するとの報告もありますことから、学校でも重要性や困難性は認識しており、今後とも保護者や関係機関と認識を共有しながら、生徒や保護者に寄り添った支援が行えるよう努めて参りたいと考えております。