皆様おはようございます。公明党の木村ほまれでございます。
質問に先立ちまして、新型コロナウィルス感染症によりお亡くなりになられました方々の御冥福を心からお祈りいたしますとともに、療養中の皆様にお見舞いを申し上げます。そして、昼夜を問わず御尽力を頂いております医療従事者の皆様はじめ全ての関係者の皆様に、衷心より敬意と感謝を申し上げます。
さて、今から約30年前、「マネジメントの父」と言われる経営学者・ドラッカーが著した「ポスト資本主義社会」は、次のような冒頭で始まります。
「西洋の歴史では、数百年に一度際立った転換が起こる。
世界は歴史の境界を越える。社会は数十年をかけて次の新しい時代に備える。
世界観を変え、価値観を変える。社会構造を変え、政治構造を変える。
技術と芸術を変え、機関を変える。やがて50年後には新しい世界が生まれる。」
以来、世界と私たちは未だ転換の渦中にあります。
彼のいう“数百年に一度”の“際立った転換”が、“数十年をかけて”今、起きているのだとすれば、果たして20年後の新しい世界は、どういう姿をした社会でしょうか。
そして彼は、続けます。
「今が未来をつくる時である。なぜならば、正に今、すべてのものが流動的であって、不安定だからである。今こそ行動の時である。」と。
新型コロナのパンデミックや、気候変動に伴い多発する自然災害、脱炭素化やSDGs、デジタルトランスフォーメーション(DX)といった世界の潮流は、今が流動的で不安定な転換期にあることを物語っているのかもしれません。
今が未来をつくる時――。その今を耐え忍び、懸命に頑張っておられる皆様方とともにこれを乗り越え、誰も置き去りにしない愛媛の未来に思いを馳せながら、県政発展のため微力を尽くすことをあらためて決意し、質問に入らせて頂きます。
初めに、国の新たな経済対策等についてお伺いします。
先般行われた衆議院議員総選挙は、長引くコロナ禍をどう乗り越え、そして傷んだ経済を立て直し、社会経済活動をどのように再生していくのか、そのことが大きく問われた選挙でありました。
期間中の世論調査によりますと、国民が重視する政策について、新型コロナ対策はもちろんですが、多くのメディアで1位に挙げられたのは、「経済対策」でありました。
岸田首相は、就任時の所信表明演説において「新しい資本主義」のビジョンを語り、「成長と分配の好循環」によってコロナ後の新しい社会を実現していく決意を示され、総選挙で信任を得ると同時に、スピーディーに、そして公約通り、過去最大の財政支出となる55.7兆円の経済対策を取りまとめました。
11/19に閣議決定された今回の経済対策は、事業規模では78.9兆円となり、ワクチン3回目接種の無料化など「新型コロナ感染症の拡大防止」に35.1兆円、GoToキャンペーンなど「社会経済活動の再開と危機への備え」に10.7兆円、18歳以下に10万円相当の給付など「新しい資本主義の起動」に28.2兆円、5か年加速化対策の着実な実施を含む「防災など安全・安心の確保」に5兆円の、大きく4つの柱で構成され、GDPを5.6%程度押し上げる効果があると試算されています。
私たち公明党が掲げた「18歳以下への10万円相当の給付」や「マイナンバーカード取得者に最大2万円分のポイントを付与するマイナポイント」などの主張も大枠、大筋において反映され、心強く感じますとともに、臨時国会での速やかな成立と早期の事業執行に向け、今後の議論を注視してまいりたいと思います。
そうした多くの国民の期待が高まる中、翌20日には電撃的に岸田首相が来県され、県立松山東高校と道後温泉を訪問されました。
松山東高でタブレット端末を使って生徒とともに模擬授業を体験したり、デジタル事業者等と意見交換する様子や、飛鳥乃湯泉で観光関係者と車座で意見交換したり、道後商店街を視察する姿を報道で目にしましたが、「聞く力」をアピールする岸田首相ならではの誠実な政治姿勢が伝わり、とても温かい気持ちになりました。
ぜひ、今回の車座対話等で寄せられた様々な要望が、1つでも多く結実することを期待いたしたいと思います。
さて、首相が掲げる「新しい資本主義」は、分配の原資を稼ぎ出す「成長」と次の成長につながる「分配」を同時に進めることが実現のカギを握るとされ、その内、先の衆院選において各党の主張の多くは「分配」に関するものでした。
今回の経済対策では、住民税非課税世帯への10万円や、生活困窮学生への緊急給付金、売上が減少した中小事業者への最大250万円の支給、保育士や看護師、介護職員などに対する賃上げなど、長引くコロナ禍で傷ついた痛みを手当てする「分配」が、随所に盛り込まれています。
本県においても、これまで展開してきた、県や市町によるプレミアム付商品券や飲食券、先日発表した愛顔の文化鑑賞券、愛顔の読書券などは、乾いた土が水を吸うようにあっという間に完売しました。これも、傷んだ地域経済に対する1つの「分配」ではないかと思います。
そうした適切な「分配」を図りながら傷んだ経済を安定させてこそ、次なる「成長」は可能となります。
政府は経済対策の中で、成長するための戦略として「脱炭素化」や「デジタル化」を盛り込み、「デジタル田園都市国家構想」を加速するとしていますが、私は、このことは本県にとって追い風であり、経済・社会活動のV字回復に向けた絶好の機会であると考えます。
「脱炭素化」は今や世界の潮流であり、「デジタル化」は超スマート社会へのパスポートであります。
これまでのハンデが強みとなり、あらゆる価値が多様化し、社会のルールが大きく変わるこれからの時代、私は、“成功は、ガレージからはじまる”で有名な、かつてのグーグルやアップルのように、必ず地方から新たなビジネスモデルを創出することができると確信しています。
そのためにも、「成長」の土台となるインフラ整備、今治小松自動車道、大洲・八幡浜自動車道、津島道路および内海宿毛間の3つのミッシングリンクの解消が急がれますし、将来の四国新幹線の導入は、全国で唯一取り残された四国がいよいよ本格的に「成長」するためのスタートラインであり、着実に進めていくべきと考えます。
そうした整備が進み、本県ならではのグリーンでスマートな地域社会のありようを想像したとき、それは岸田首相が掲げる「デジタル田園都市」そのものではなかろうかと思うのであります。
そこで、お伺いします。
知事は、国の新たな経済対策も含め、岸田新政権が描く「新しい資本主義」というビジョンをどう評価し、今後どのような成果を期待されるのか、ご所見をお示し頂ければと思います。
〈答弁概要:中村知事〉
「新しい資本主義」は、科学技術立国やデジタル田園都市国家構想等による成長戦略と、働く人への分配機能の強化や中間層の所得拡大等による分配戦略を両輪として、成長と分配と消費の好循環を生み出そうとするもので、コロナ禍で疲弊した国民に対し、経済の成長と安心な暮らしの両立に向けた方向性を示されたものと受け止めております。
また先月、閣議決定されました、過去最大規模の経済対策には地方重視や格差是正重視の政策も盛り込まれていることから、先般の本県訪問時にご一緒させていただきましたが、その時に発揮された総理の「聞く力」をもって、地方の実情をしっかりと汲み取り、事業展開に活かされるとともに、新型コロナ対策を始め、疲弊した地域経済の回復に向けた、具体的な事業内容や明確な道筋を示していただき、県民が対策の効果を実感できるよう、スピード感を持って課題解決に全力で取り組んでいただきたいと思っております。
さらに、経済対策に留まらず、国の将来を見据えた社会保障制度改革や財政健全化など、国民に痛みが伴う問題と同時に、国会議員の定数削減といった身を切る改革にもリーダーシップを発揮して積極果敢に切り込んでいただき、更なる骨太のビジョンを打ち出されることを大きく期待しております。