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2021年 12月定例会(12/2)

テーマ防災・減災対策

防災減災対策におけるDXの推進等について(2021年12月定例会)

防災減災対策におけるDXの推進等についてお伺いします。

ご案内の通り、わが国は国土面積の約7割を山岳地帯が占め、その山岳は急峻であるため河川の勾配が険しく氾濫しやすい構造となっています。加えて国土自体が崩落しやすい風化岩で構成され、断層が多く、いろんな岩石が入り交じり、降雨や地震で崩れやすいという自然災害に厳しい特徴を有しています。

近年は、気候変動の影響といわれる自然の猛威がますます厳しさを増しており、その主な災害を振り返ろうと思い調べておりますと、“毎年のように”ではなく“毎年確実に”発生していることを再認識させられ、強い危機感を覚えました。

2015年9月、鬼怒川等が堤防決壊した関東東北豪雨。
2016年4月、観測史上初となる最大震度7を2度記録した熊本地震。
2017年7月、筑後川等が決壊した九州北部豪雨。
2018年7月、本県も被災し、“平成最悪の水害”と称された西日本豪雨。
2019年9月、送電線鉄塔が倒壊し、広域停電が発生した令和元年房総半島台風。
2020年7月、球磨川等が決壊・氾濫した九州南部豪雨。

そして本年7月には熱海市で大規模な土石流が発生し、死者26名、行方不明者1名、被災、避難者多数という甚大な被害をもたらしました。あらためてお亡くなりになられた方々に対しまして心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。

こうした背景を踏まえますと、国において“防災減災”を政治の主流に押し上げ、5年で15兆円の「国土強靭化5か年加速化対策」が本年からスタートしたことを大変心強く感じます。

そして、そうした方向性を持った流れの中で、老朽化対策をはじめ本県のインフラ整備と強化を進めていく際、私は、県としてきっちりとデジタル社会を視野に入れ、ソフト面も含めた「防災減災対策のDX」という新たなステージに向けた取り組みが求められてくると考えます。

県のデジタル総合戦略では、ICT化とDXの違いについて簡潔に、“ICT化の主眼が業務効率化にある一方、DXは住民サービス向上のため、デジタル技術を用いて課題を解決し、新たな価値を創出すること”と定義しています。

例えば、県庁にいながら久万高原町の積雪情報を動画等で確認するために必要な技術はICTですが、久万高原町の積雪情報を今すぐ知りたい県民が、どの場所からいつでも、その情報にアクセスできるようなしくみが構築できたとすれば、新たな価値の創出であり、情報を降雨の変化や河川の増水状況、自然災害全体に広げ置き換えると、それは正に「防災減災対策のDX」に他なりません。

これまで蓄積したビッグデータ、AIやIoT、5G等を重層的に活用し、雨雲の動きや線状降水帯の発生予測、危険な災害現場へのドローンの投入や物資の搬入、水門や樋門の遠隔操作、安全確率の高い避難方法の提示など、私は防災減災対策のDXの進展によって、県民の命と暮らしを守る環境を飛躍的に強化することができると考えます。

そのための課題は様々あると思いますが、今回の補正予算案には、デジタル技術を活用して本県の地域課題を解決するため、基盤となる高速無線通信網の整備に向けた事前調査事業が盛り込まれています。

本県は他県に比べ離島が多く、中山間地は広く、海岸総延長が長いという県土上の特性を有するため、高速無線通信網の整備には大変困難を伴う現実もあると思いますが、ぜひ有意義な調査結果を導き出し、本県のデジタルシフトの底上げと加速化につなげてほしいと思います。

そこで、3点お伺いします。
まず第1に、防災減災対策のDXを推進するためには、インフラとなる光ファイバーや5G基地局など情報通信基盤の整備が前提となりますが、県内の整備状況と、今後の見通しについてご見解をお示しください。

第2に、情報通信基盤整備の進展とともに、ビッグデータやAIなどを活用した災害予測や災害情報の把握・伝達、遠隔操作など、新次元ともいうべき新たな防災減災対策の実現に向け、今の内から、そして関係部署で連携も図りながらしっかり準備を進めていくことが肝要と思いますが、デジタル技術を活用した防災減災対策について、県はどのように取り組んでくのか、ご所見をお示し下さい。

第3に、国土強靭化といってもそれを担うのはマンパワー、つまり、人材です。
建設業界において人口減少による担い手不足は極めて深刻な課題であり、超スマート社会を見据えると、デジタルスキルを有する人材の確保も大事な視点となってまいります。私は、DXの推進により労働生産性の向上を実現することは、担い手不足をカバーするために極めて有効なアプローチではないかと考えます。

そこで、お伺いします。
本県の建設産業界を取り巻く深刻な担い手不足を乗り越えるため、県は今後、担い手対策にどのように取り組んでいくのか、ご見解をお示しください。

<答弁概要①:企画振興部長>
近年、相次ぐ自然災害から県民の命や暮らしを守るためには、災害発生予測に必要なデータの収集等に加え、発災時でも県民誰もが確実かつ迅速に、必要な情報収集や発信を行うことができる重要な社会インフラである情報通信基盤の整備が不可欠であると認識しております。

このような中、県内の光ファイバ整備率は、国の調査では昨年3月末で98.2%となっており、未整備地域のある13市町においても、国の補助事業を活用した整備などにより、来年度には、ほとんどの市町で100%に近い整備率となる見込みとなっております。5G基地局についても、携帯電話事業者が整備主体となり、来年3月には県内全市町において一部がエリア化される見込みですが、県としては、引き続き国に対し、地域間格差のない基盤整備に向けた技術・財政両面からの支援を求めていきたいと考えております。

また、県では、12月補正予算案で、新たに安価で高性能な情報通信基盤でありますWi-Fiを活用した防災対策や産業のスマート化など、地域課題の解決に向けた調査経費を計上したところであり、今後も、高速通信技術を生かした県民生活の質の向上や産業の活性化等にも取り組んで参りたいと考えております。

<答弁概要②:防災減災統括部長>
県では、昨年度、災害発生時に被害情報の集約や住民への避難情報等の提供を行う災害情報システムについて、AIなどデジタル技術を活用した被害状況の把握や、地図情報による避難指示、道路規制状況の可視化などシステムの高度化を図り、本年4月から運用を開始したところであるが、デジタル技術は日々進化しており、絶えずさらなる活用に向けた検討を進めております。

具体的には、県、国及び専門的知見を有する通信事業者等で構成する検討会を設置し、防災分野での5G等のデジタル技術活用の可能性や導入に当たっての課題等について議論を深めているところであり、今後、ローカル5G等の技術を用いて想定災害現場から県庁舎に高精細映像を伝達する実証試験を行うなど、災害情報システムへの実装の可能性も見据えながら、年度内に報告書を取りまとめることとしております。

今後とも、激甚化・頻発化する災害から県民を守るため、国や市町、防災関係機関と緊密に連携しながら、進展する情報通信基盤の整備やデジタル技術の効果的な活用を図り、より迅速かつ的確な情報共有や災害対応を促進するなど、防災・減災対策の一層の充実・強化に取り組んで参りたいと考えております。

<答弁概要③:土木部長>
防災・減災対策の推進に中心的な役割を果たす建設業者の担い手不足が深刻化する中、県では、担い手対策として、人材確保・育成に加えて、DXの推進により、工事現場の生産性の向上を図ることが重要であると認識しており、各種施策を積極的に展開しているところでございます。

具体的には、ICT技術者の確保・育成のため、経営者向けのトップセミナーや実務者向けの講習会の開催などに取り組むとともに、さらに現場の生産性向上に向けては、建設業者に対して建設機械の自動制御システムやドローン等の導入を支援しているほか、県発注工事では、建設業者と測量設計業者が施工プロセスを分担してICT施工に取り組む地域モデルを推進しているところでございます。

今後は、更なるICT施工の普及拡大に向け、県発注工事の多くを占める小規模工事への適用も検討するとともに、ウェアラブルカメラ等を活用した工事監督のリモート化や3次元データを活用した設計など、DXを推進することで生産性の向上を図り、建設産業の担い手対策に繋げて参りたいと考えております。

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