最後に、流域治水についてお伺いします。
ご案内の通り、近年は線状降水帯による豪雨災害が後を絶ちません。本県でも毎年のように水害等が発生しており、本年も7/7を中心に豪雨が発生し、土砂災害や河川の氾濫について避難勧告や警報が出されました。
その際、災害時要配慮者である住民の方々から私の元に、実際に感じた恐怖と不安、改善に向けた要望等が寄せられました。
例えば、「松山市が指定した最寄りの避難所よりも砥部町の避難所の方が近いので、警報が出された時点でそちらに避難したが、まだ開設されていなかった」という声、「うちの避難所は河川の向こう側にあり、増水時に移動するのはとても不安だ」という声、「町内に愛媛県生涯学習センター、えひめ青少年ふれあいセンターがあるが、避難所としての利用はしていないと言われた」という声など、具体的にお聞かせ頂きました。
これらは避難のあり方に関する指摘ですが、今後の防災減災対策を講じていく上で、とても重要な視点が含まれています。それは“流域治水”という考え方であります。
これまでの水害対策は、河川や下水道、砂防施設など、それぞれの管理者である国や県、市町が主体となり取り組んでまいりました。言い方を変えれば、それぞれごとの取り組みであり、対策の内容も、護岸の強化や堤防の整備など、水をあふれさせずに海に流すことが中心でありました。
しかし近年は、地球温暖化の影響とみられる豪雨災害の激甚化、頻発化により、接続する支川も含めた河川が、広域で同時に氾濫するといった事態が相次いでいます。
それに対し、国が本年7月に打ち出したのが“流域治水”という方針です。
これは、従来の洪水防止策に加え、水があふれることを前提に、流域という地形の枠組みで捉え、雨水の貯留機能の向上をはじめ、住宅や病院・社会福祉施設等の安全な場所への移転といった対策を重視したものであります。
流域によっては遊水地の機能を水田などに求めることも想定されているため、対策づくりには住民や企業など幅広い関係者の参加が欠かせません。
国では、全国に109ある1級水系ごとに協議会を設置し、流域全体で早急に実施すべき事前防災対策について協議を行い、今年度末までに、水系ごとにハード・ソフト一体による治水対策の全体像を示す「流域治水プロジェクト」を策定する見通しで、本県では重信川、肱川の2水系が対象となり、いずれも8月に最初の協議が行われたとお聞きします。
私は、この際、河川対策や下水道対策などの強化に加え、上流域における遊水地や調節池、雨水貯留浸透施設の設置により、更なる流出抑制対策を推進するとともに、市町の内水対策を後押しし、排水ポンプ車の迅速な出動態勢の確保やポンプ場の設置など排水能力の向上を図り、国や県・市町が一体となった治水対策の体制を構築してほしいと強く願うものであります。
また、先ほど述べましたように、災害時要配慮者の方々から寄せられた避難時の課題等に対して、隣接する自治体同士や県と市町との連携を強化することは極めて重要といえるのではないでしょうか。豪雨災害は行政区で起きるのではなく、流域で起きるからです。
その点、本年、国が打ち出した流域治水という方針は、正に住民の意を汲み、災害時要配慮者の願意を満たすものと、私は考えます。
また、広域避難のあり方に関しましては、菅総理の掲げるタテ割り行政の打破、このことが非常に重要であり、部局の“壁”、県と市町の“壁”、健常者と障がい児者との“壁”、そうした“壁”の間で、誰も取り残さず、すべての人が安心して適切に避難できる体制の実現をめざし、取り組みを進める必要があると思います。
加えて、重信・肱川のような一級河川だけでなく、地元松山市で申しますと、宮前川や内川、大川といった中小河川、さらには農業用水路や排水溝に至るまで細かな対策が求められますし、ハード面だけでなく、緊急情報などの出し方や避難のあり方などソフト面の課題につきましても、防災に対する県民全体の意識の高まりとともに、様々な課題が山積していることを、あらためて痛感するのであります。
そこで、お伺いします。
河川対策、流域対策、ソフト対策等の全体像を示した上で、“河川流域のあらゆる関係者が協働して水害リスクを軽減する”ための「流域治水プロジェクト」について、県はどのように受け止め、今後どのように取り組んでいくのか、見解をお示しください。
また、近年頻発する台風等による大規模な風水害を踏まえ、国において広域避難のあり方や避難情報の見直し、さらには要配慮者のうち、支援が必要な方の個別計画の策定が議論されておりますが、県では、これら広域避難などの様々な課題に対して、市町等と連携し、どのように取り組んでいくのか、併せてご所見をお聞かせください。
以上で、私の質問を終わります。ご清聴、誠にありがとうございました。
〈答弁:土木部長〉
流域治水プロジェクトの取組についてお答えをいたします。
新たな取組である流域治水プロジェクトは、近年、気候変動の影響により、豪雨災害が激甚化、頻発化していることを踏まえ、市町や流域住民を含むあらゆる関係者が多様な対策を一体的に講じることにより、治水効果の向上や早期発現が期待できる効果的な施策であると認識しております。
このため、本年8月に国が設立した重信川、肱川の両流域での協議会に県も参画し、氾濫の防止、被害の軽減、早期復旧などを柱として、既存ダムの事前放流などの新たな対策も取り入れながら、関係機関と連携してプロジェクトを策定しているところであります。また、県管理河川においても、一昨年に甚大な被害が発生した立間川流域で先行し、次期出水期までのプロジェクト策定を目指して、宇和島市等の関係機関との調整を進めております。
今後は、この取組を県下全域に展開する必要があることから、関係者との密接な連携の下、各地域の土地利用状況や浸水実績などに応じた実効性のあるプロジェクトを策定し、速やかに実施していくことで、県民の安全・安心の確保に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
<答弁:防災安全統括部長>
大規模災害を踏まえた広域避難などへの取組についてお答えします。
熊本県に甚大な被害をもたらした令和2年7月豪雨など、全国各地で頻発する豪雨災害では、多くの高齢者などの要支援者がお亡くなりになられており、県民の皆さんの命を守るため、避難対策をさらに深化させる必要があると改めて認識をしております。
県では、西日本豪雨の検証結果を踏まえまして、災害時の迅速、的確な避難を図るため、来年度から、県の防災アプリで地図形式による避難情報の提供を行いますとともに、福祉関係者などと連携した市町における要支援者避難体制の整備を支援しております。また、重信川を対象とした減災対策協議会において、国と連携して河川流域の避難体制の検討を行っているところであります。
こうした中、近年の大規模災害の教訓を踏まえ、国の作業部会では、避難指示と避難勧告の一本化など、避難情報の抜本的な見直し、災害対策基本法への位置づけによる要支援者避難計画の策定の促進、さらに河川の大規模氾濫に伴う広域避難の推進方策等について、年内を目途に検討が進められております。
県といたしましては、国の検討結果を踏まえ、来年の出水期に向けた避難情報の見直しの周知徹底はもとより、本県の実情も踏まえた要支援者の避難対策や広域避難の取組の促進を図りたいと考えており、市町等と連携して避難対策の一層の充実・強化に取り組んでまいりたいと考えております。