水道事業等について - 質問 -
水道事業についてお伺いします。
私たちの暮らしに欠かすことのできない水、安全でかけがえのない水を各家庭に運んでくれるのが水道であります。その水道を将来にわたって維持するため、昨年12月、改正水道法が成立いたしました。改正の趣旨は、人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足など、水道の直面する課題に対し、基盤強化を図ることとされています。
本県では昨年、西日本豪雨により、宇和島市など広範囲で断水が発生。酷暑の中、ライフラインである水は、文字どおり命綱であることを痛感させられました。近年の災害の激甚化、頻発化を踏まえますと、水道施設の計画的な更新や耐震化など直面する課題を解決し、水の安定供給を維持していくためには、改正法が求める水道の基盤強化について、本県としても積極的に取り組む必要があると思います。
そこで、改正の趣旨に沿ってお伺いしますが、まずは人口減少に伴う水の需要の減少についてであります。
水道事業を運営するのは自治体でありますが、近年は料金収入の減少で財政状況が悪化し、事業の維持が困難になりつつあると聞きます。
そこで今回、自治体が施設の所有権を持ったまま、民間企業が運営するコンセッション方式を導入しやすくなるよう改正が行われました。これは官民連携の選択肢を1つふやすものであり、導入するかどうかについてはあくまでも各自治体の判断となります。一部の報道では、水道事業の民営化が料金の高騰や水質悪化を招き、結局公営に戻したという海外の事例を引き合いに批判の声が上がっています。
そこで、お伺いします。
改正法が定めた官民連携の推進のうち、一部批判や不安の声があるコンセッション方式について、県は、市町の水道事業の経営状況や導入に向けた動向等を踏まえ、どのように認識しているのか、見解をお聞かせください。
次に、水道施設の老朽化であります。
現状、老朽化した水道管を全て更新するのに、単純計算で約130年かかるとされる一方、事業者の中には水道施設の維持修繕の基盤となる施設台帳を作成、保管していないケースも見受けられると聞きます。
改正法では、水道事業者等に対し、施設台帳の作成、保管を義務づけ、計画的に施設を更新する努力義務などを課す一方、県に対しては、国の基本方針に基づいて水道基盤強化計画を定め、自治体や水道事業者等を構成員とする協議会を設けることができるとし、市町村を越えた広域連携がより行いやすくなる内容が盛り込まれました。
また、時期を同じくして策定された防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策において、国は、基幹管路の耐震適合率を2022年度末までに50%以上にするため、整備のペースを1.5倍以上に加速させるとしていますが、基幹管路の耐震適合率が全国36位の本県としては、それ以上のペースで水道施設の整備を大幅に加速させる必要があると思います。
そこで、お伺いします。
老朽化対策、耐震化を含め、県内の水道事業の基盤強化に、県は今後どのように取り組んでいくのか、見解をお示し願います。
最後に、深刻化する人材不足についてであります。
新居浜東高校では2016年から、普通科内に健康・スポーツコースが新設され、体育系大学や医療体育系専攻大学への進学を目指す人材育成への着手が行われています。今治工業高校では、2016年から機械造船科を設置し、造船・海運など地場産業を支えるスペシャリストの育成がスタート。上浮穴高校では、地場産業である林業の担い手育成のため、森林環境科で新年度入学生の全国募集が始まりました。
一方、水道事業を支える人材につきましては、県内に管工事を学べる学校が今のところ見当たりません。激甚災害のたび痛感するのが、水を初めとしたライフラインの重要性であるならば、私は、平時からその担い手を育成、輩出する準備を怠ってはなりませんし、その入り口となる教育の窓口は必要不可欠と考えるのであります。
そこで、教育長にお伺いします。
本県の実業系高校において、管工事等の専門課程を学ぶことができる設備科(仮称)を設置すべきと考えますが、見解をお示しください。
水道事業等について - 答弁 -
答弁:県民環境部長
水道事業に関する御質問のうち、まず、コンセッション方式の導入に関してお答えします。
県内では、全ての市町や企業団による32の水道事業が運営されており、29年度決算で、30事業が経常黒字を維持しておりますものの、今後、水需要の減少や施設の老朽化に伴う更新需要の増大など経営環境が厳しさを増す中、将来にわたり、水道の安全・安定供給を維持するために、これまで以上に経営基盤の強化を図ることが求められております。
このため、各市町では、長期的な視点に立った施設の計画的な整備更新や、維持管理業務等の外部委託による経営の効率化などに取り組んでいるところでありまして、コンセッション方式については、民間のすぐれた技術やノウハウの活用等による経営基盤の強化が期待されるものの、水質の安全性の確保や災害時の対応への懸念等も指摘されておりまして、現時点では、県内市町等の具体的な導入の動きはございません。
県としては、コンセッション方式の導入が市町等にとって、経営的な側面だけでなく、水道事業の持続性の確保やサービスの質の向上の観点からも納得のいく選択肢となることが重要と考えておりまして、今後、国においては、具体的な制度設計を行うとともに、市町や国民の幅広い理解が得られるよう、丁寧な説明を尽くしていただきたいと考えているところであります。
次に、水道事業の基盤強化に関する御質問にお答えします。
本県では、対応年数40年を経過する老朽管の割合が、28年度末で13.2%と全国平均14.8%を下回っているものの、老朽化等により耐震面で脆弱な管路が多数存在する中、県では、えひめ震災対策アクションプランに基づき、市町の老朽管の更新も含めた管路の耐震化の取り組みを支援しておりまして、29年度末の県内の基幹管路の耐震適合率は、前年度から3.6ポイント上昇するなど、着実に整備が進んでおります。
しかしながら、耐震適合率は、他県と比較しても依然低位にとどまっており、県では、市町の取り組みをさらに加速するため、引き続き国に対し補助率のかさ上げや補助採択の要件緩和拡充など、必要な財源の確保を働きかけるとともに、今後さらに、各市町に対し、老朽化対策や耐震化の基礎データとなる水道施設台帳の整備を初め、施設の長寿命化や将来の財政収支見通しを踏まえた計画的な整備、更新等について、きめ細やかな助言を行うこととしております。
また、県と関係市町で構成する水道事業経営健全化検討会では、来年度前半を目途に、経営基盤の強化や経営の効率化に向けた広域連携等の方向性を取りまとめることとしており、県としても、引き続き具体化に向け支援を行うことで、県内水道事業の基盤強化に取り組んでまいりたいと考えております。
答弁:教育長
水道事業のうち、管工事等の専門課程に関する学科についてお答えいたします。
県内高校の工業科では、建築科や土木科の科目を通じて、管工事に関する基礎的な知識や技術を身につけさせ、希望生徒には教員が放課後等を利用して実技指導に当たりますほか、県管工事協同組合連合会による出前授業等の実施により、実務能力の向上にも努めております。
また、今年度から、建築配管作業3級について、建築科、土木科以外の生徒であっても、6時間以上の専門講習受講により受験資格が認められることとなったため、より多くの生徒に積極的な資格取得を推奨しております。
県教育委員会では、このような取り組みにより管工事業の担い手育成に努めているところであり、新たな学科の設置につきましては、現在、国の教育再生実行会議において、新時代に対応した高等学校改革として、専門学科のあり方や学科の区分のあり方などが検討されておりますことから、こうした国の動向を注視するとともに、地域や産業界のニーズ等も踏まえながら、総合的に研究してまいりたいと考えております。