被災者支援システムについて - 質問 -
次に、被災者支援システムについてお伺いします。
笹岡議員から御案内のとおり、公明党愛媛県本部では、先月23日、防災対策委員会メンバーを中心とする16名で西宮市情報センターを視察いたしました。その目的は、被災者支援システムの有効性の検証であります。
吉田稔西宮市情報センター長からお話を伺いました。
想定外の危機が発生したとき、行政にとって最も重要なものは何かとの私たちの問いに、吉田センター長の答えは明確でした。それは、スピーディーな決断を行うための情報であります。
阪神・淡路大震災を振り返り、庁舎が破壊され、職員の消息確認もままならない中で、必要な判断を次々と下さなければならない、そのときに最も必要なものは情報であった。ゆえに、適切な決断ができる枠組みを平時から準備しておくことが重要であり、被災者支援システムの構築は唯一簡単にできる事前準備だというのが、吉田センター長の説であります。
同システムは、住民基本台帳のデータをベースとして、被災者台帳、被災住家台帳を管理する被災者支援システムを中核に、6つのサブシステムから構成されるのですが、早い話、これによって罹災証明書の発行が飛躍的にスピードアップするのであります。
言うまでもなく、罹災証明書の発行がないと、義援金や生活再建支援金などを受け取ることができません。着のみ着のままで避難された方々にとって、支援金は当面の生活を支える命綱と言えましょう。
しかし、東北3県の生活再建支援金の支給率は、6月3日現在で、いまだ4.8%ないし32.5%という厳しい状況なのであります。
対照的に、被災者支援システムを導入した宮城県山元町では、罹災証明の申請件数に対する発行件数は、既に約9割に上っているのであります。
また、自治体によっては、コンピューターに精通した職員がいないといった声も出てきそうですが、同システムは、西宮市の一般職員が災害のさなかに開発したもので、決してIT能力の高い職員じゃなければできないものではありません。
さらに、現在は、財団法人地方自治情報センターが各自治体に無料で提供しており、カスタマイズも許容するオープンシステムですから、職員が既存のパソコンで立ち上げさえすれば、コストはほとんどかかりません。
つまり、同システムの導入に当たり、スキルもコストもボトルネックとはなり得ないのであります。
私は、阪神・淡路大震災の教訓と実践に裏打ちされた同システムを平時に導入、運用していくことは極めて有益と考えるのでありますが、実際、震災後、被災者情報一元管理の必要性への認識が高まり、同システムの導入申請を行う自治体がふえ、5月26日現在で300に達したと伺っております。
ちなみに、5月13日の参議院予算委員会にて、同システムの全国への普及推進を要請した公明党山本博司参議院議員に対し、片山総務大臣は、「ぜひ多くの自治体に使っていただきたい。平時からの整備は大変重要なことだ」と明確に答弁されております。
このことからも、被災者の生活再建に向けた各種行政サービスの円滑な提供を図るため、県として、できる限り早期に全市町がシステムを導入するよう促すことが重要であると私は考えております。
また、万が一、被災により市町が行政機能を失ったことを想定し、被災者支援システムに不可欠となる住民基本台帳情報のバックアップをとる体制も必要と考えるのであります。
そこで、お伺いします。
本県市町における被災者支援システムの現在の導入状況や、住民基本台帳情報のバックアップの状況はどうか。また、同システムの普及活用に向け、県として積極的に取り組むべきと考えますが、御所見をお示しください。
被災者支援システムについて - 答弁 -
答弁:総務部長
木村議員にお答えをいたします。
市町における被災者支援システムの導入や住民基本台帳情報のバックアップの状況はどうか。また、普及活用に向け、積極的に取り組むべきと考えるがどうかとのお尋ねでございます。
まず、住民基本台帳情報のバックアップについて申し上げますと、県内20市町のうち、10市町が庁舎外でも保管をしておりまして、そのうち、県外で保管が4市、県内の他の市で保管が2町、市町内の他の場所で保管が4市町となっております。
一方、残りの10市町は、庁舎内での保管にとどまっておりまして、今回の震災で庁舎に壊滅的な被害を受けた自治体において、バックアップデータがあったため住民基本台帳の早期復旧ができたという貴重な教訓を踏まえまして、改めて、より安全な場所での保管を検討するよう助言してまいりたいと考えております。
また、被災者支援システムにつきましては、現在のところ、県内市町での導入事例はございませんが、木村議員御案内のとおり、被災者情報を一元的に管理するシステムは、迅速かつ的確な支援に資することが今回の震災でも実証されておりまして、平常時よりシステムを稼働させておくことが、危機発生時への備えになり、ひいては住民の安全・安心につながるものと考えております。
このため、先日、県内市町、消防等の防災関係者が集まる会議で、被災者支援システムの有効性や利活用について、早速周知を図ったところであります。
県といたしましては、他のシステムを含め、地方団体向けに無償で提供されております被災者支援のための情報システムの導入につきまして、各市町に対し積極的な検討を促してまいりたいと考えております。