公務を終え、堀之内を歩く。但し、ウォーキングではなく。 お目当ての、「国立ロシア美術館展」の鑑賞のため、である。 開催初日とあって、会場である県美術館は、来場者が引きも切らない盛況ぶりだ。作品の前の人だかりの邪魔にならないよう、じっくり鑑賞する。 おおおおぉ。 いくら美術に不勉強な私でも、目の前の1つ1つの作品に対峙して、それらが、いかに力があり価値があるか、十分すぎるほどに理解できた。 その中で。 何といっても圧巻は、イヴァン・アイヴォゾフスキー作、「アイヤ岬の嵐」。 海の難所であるクリミア半島のアイヤ岬にて座礁し、荒れ狂う嵐の海、脱出する乗組員たち、難破船で最後まで戦う青年。 襲いかかる凄まじい自然の驚異に、決然と戦いを挑む人間たち。そのドラマを通して、希望を失わない人間の強さと逞しさ、が胸に迫ってくる。 見る者に、汲めども尽きぬ勇気を与えてくれる、まさに偉大な作品、だ。 一巡しながら。 時系列を追っかけていくと、作風が次第に変化していくのがわかる。古典主義からロマン主義、リアリズムへ。 日本でいうと、江戸時代から昭和のはじめまでの長きにわたる、激動の、ロシアの息づかいが伝わってくる。 同展では、国立ロシア美術館に所蔵される約40万点のコレクションの内、ロシアの黄金時代といわれる18~20世紀の、厳選された作品101点を紹介。 初めて日本に持ち込まれた作品ばかりであり、その邂逅は正に希少価値である。 鑑賞を終えて、会場を後にしながら。ふと、道端に落ちた銀杏に足が止まったのは、自身の感性が刺激されたからか。 芸術の秋。ぜひ、皆様にも、心の保養に訪れられることをお奨めしたい、と思う。