★愛媛ジャーナル2007年7月号にて、 県議当選後の初心と抱負を述べさせて頂きました。 以下ご参照頂ければ幸いです。 Q.1 今回の県議選への出馬を決断された背景、理由は。A.1自分自身が政治家になろうと考えたことはありませんでしたが、生活者として国政や地方政治を注視してきたつもりです。私が携わってきた広告の仕事では、対象、つまりターゲットという概念が非常に重要です。政治に当てはめると、その主たる対象は誰なのか。最大多数ということを考えた場合、私はやはり「庶民」だろう、と。ですから、政治は「庶民」の暮らしを守ることを第一義としなければならないと思います。ましてや地方議会は、県民生活に直結しています。そうした観点から見て、まだまだ「庶民」に光が当たっていないと感じることが多々ありました。特に、私は幼少期に父を亡くし、母子家庭に育ったこともあり、社会的弱者に対する政治施策にはとりわけ敏感なまなざしを向けてきました。そんな中で、公明党県本部の井上和久代表から「次の県議選に出てみないか」と打診がありました。政治の表舞台に立つ自分の姿を想像し、それがどんな人生になるのか、自問自答を繰り返す中、大好きな仕事と会社を容易に捨てることはできませんでした。しかし、普通の庶民である私だからこそ、庶民の本当の気持ちがわかるのではないか。それを県政という舞台で、政策と地域づくりに反映させることができれば庶民のお役に立てるかもしれない。また、広告業界で培ったビジネススキルは、党の新たな戦力にもなりうると考え、最終的に、新たなステージへの挑戦を決断いたしました。 Q.2 その選挙戦で特に強調された訴えは。また、トップ当選を飾れた勝因は。A.2選挙期間中、具体的な公約の前提部分として、最初から最後まで、有権者の皆さんに2つのことをお約束しました。ひたすら皆さんのために働きます、これが1番目でした。議員は公僕であり、雇い主は県民です。企業にとって顧客が大切であるように、県政サービスの顧客はズバリ県民です。県民は議員にとって「雇い主」であると同時に「顧客」でもあるわけです。常に、県民の目線で、県民生活が豊かになるように地域の発展に尽くすのは、議員として当然の務めです。2番目は「困ったときにはまず木村に相談してみよう」と言って戴けるくらい庶民に身近な議員になります、ということでした。公明党は結党以来、常に庶民の側に立ち、その思いを共有し、代弁する政党として活動してきました。その歴史と伝統の上にしっかり軸足を置いて働いていく中で、もっと政治を身近に感じて頂きたいとの思いからでした。もちろん、限られた予算、厳しい財政状況下ですし、県域の全体バランスということもありますので、戴いたご相談がすべてご期待に沿うというのは困難です。しかし、結果的に実現できなかったとしても、最大限の努力と説明責任を誠実に果たしながら、次善策を一緒に考えることはできるはずです。私は、たくさんの方にそのように訴え続けました。皆さんからは「よし、分かった。頼むぞ」と力強い激励を戴くことができました。また、立候補者の中では若い方でしたし、直前まで民間企業に勤務していたので、ここでも庶民の気持ちが分かる、行政に民間の感覚を吹き込んでくれるのでは―という有権者のご期待も感じました。勝因は、ひとえに党員の皆様、なかんずく我が党最大の支持基盤である創価学会の皆さんを中心とした幅広い支持者のおかげです。我が事のように必死で、手弁当で支持拡大に奔走くださった皆さんあればこそのトップ当選であり、感謝の思いは尽きません。 Q.3 今後、政治家として大切にしていかれたい理念、信条は。A.3県民の要望や地域が抱える課題は実に広範で、これで終わりということはありません。議員である以上、常に様々な行政課題と向き合うことになります。その一つ一つに対して「役所に伝えておきましょう」と事務的に対応するのではなく、「それは大変な思いをされましたね」と、痛みや悩みを共有するところから始めたいと考えています。これは公明党の理念を体現するものであり、公明党議員としての私の信条でもあります。選挙中、「何でも相談ください」と申し上げたこともあり、当選から短期間で驚くほど多数のご相談、ご要望を頂戴しました。年金や介護など、やはり福祉に関することが多いというのが感想です。なかにはとても深刻な問題もあり、愕然とする場面も多々ありました。その中で気になったのは、どうせ行政や議員に言っても無理と、半ばあきらめていた方が少なくなかったことです。しかし、よくよく伺ってみると、解決の糸口が見えてくるものもあり、実際にいくつかは行政から具体的なサポートを受けるところまでこぎつけました。今後とも、県民の気持ちの一分でも汲み取れるような皮膚感覚を大切にしながら、決して事務処理に終始するのではなく、痛みの共有から打開策を模索する姿勢を堅持していきたいと思います。 Q.4 県政にはどのようなスタイルで臨まれますか。A.4政党も同じですが、議員個人にもその人ならではのコンセプトやオリジナリティが求められます。私の場合は、先にも申しました広告業界で培ったビジネススキルという部分がそれに当たると思います。顧客発想でいろんなことをプロデュースさせて頂いた経験は、必ず政治の世界で応用できると考えています。マーケティングの出発点は顧客です。ドラッカーは、あらゆる事業の目的は顧客の創造であると定義しました。政治にマーケティングを導入するということは、県民のニーズから出発するということです。それは生活現場に足を運ばない限り、机上の空論に過ぎません。ですから私は、どんどん現場に足を運び、皆さんのお声をお伺いし共感しながら、共に解決をめざしていきたいと思います。これこそ、私の政治スタイルに他なりません。私は選挙で「生活者満足度日本一の愛媛」というテーマを掲げ、それを一緒に実現しましょう呼び掛けました。この「満足度」というのは、人によって異なりますし、地域や分野によっても異なります。まさしく千差万別で、決して一律的に定義されるものではありません。強いていうなら「生活総合満足度」でしょうか。行政としては、可能な限りその総和が高まる方向に政策の舵を取ることが重要です。「満足度」が一部に偏ってはならず、県内全域にわたり実感できるものにしていく、それが私のめざす「生活者満足度日本一の愛媛」です。そして、そこに少しでも近づけるため、私のオリジナリティとして発揮していきたいのが「マーケティング主義」と「生活現場主義」です。 Q.5 政策的にはどのような問題を中心に取り組まれますか。A.5私が政策の中心に据えたのは、①地域の特性、即ち、強みを生かした地域経済の発展②生活者本意の行政改革③財政健全化―の3点です。県民ニーズの高い「福祉」を充実していくためにも、その裏づけとして地域経済が強くなる必要があります。地域経済の発展は、先に申し上げた「生活者満足度」とも深く関係してきます。例えば、東中南予の三地域を比べた場合、有効求人倍率や域内総生産、平均所得等の様々な経済指標で見ると、東予の優位性は高く、南予の停滞は明らかです。しかし、「満足度」は決して一律ではなく、経済性だけが「満足度」のすべてではありません。住みやすさや、子育てのしやすさや、人情あふれる地域の温かさなども、重要な「満足度」の一つです。例えば、「久万高原町が大好き。ずっとここに住みたい」と願う人は沢山いるのです。県内どの地域の方も、そこが一番と言える集合体が愛媛県、というのが理想ですね。しかし、地域経済の疲弊がどんどん進み、生活が営めないまでに地域の活力が失われては、「満足度」どころではありません。今は、南予再生に焦点が当てられていますが、これはいずこの地域にも起こり得る話です。では、どのように地域経済を再生させ、発展を期すのか。私は、地域も企業も、商品を変える、顧客を変える、競合を変える、というこの3つの組み合わせで見直しを図っていくことだと思います。例えば仮に、一玉10円のみかんから有効成分を抽出し、一粒200円で売れる健康サプリメントを五粒開発できれば、10円のみかんが100倍の価値を持つことになります。先に述べた3つを変えると、このような仮説が成り立ちます。こうした可能性を秘めた固有の素材、強みというのは、県内各地にあり、それを生かそうと真剣にトライしていく中で、必ず新しい何かが生まれてくるはずです。その主体者はあくまでも民間であるべきで、行政の仕事は民間のチャレンジ精神を触発し、必要なサポートとインフラを整備することだと思います。 Q.6 行革や財政健全化については。A.6二〇〇〇年に六五歳以上のお年寄り一人を現役世代四人で支えていたのが、少子高齢化の進展により、二〇二五年には二人で一人を支えるようになるという統計があります。単純計算でいくと、現役世代の負担は二倍となります。それでは現役世代の生活は成り立たなくなります。そこで、一定の所得があるお年寄りにも、応分の負担をお願いするなど、医療・福祉等の社会保障制度改革が進められています。こうした中、政権与党の一員である公明党は、「福祉の党」として、自民党のブレーキ役を果たしたり、セーフティネットを張ったりと重要な役割を担っています。これらの仕組み、システムをどうするのかというのは、基本的に国政の問題ですが、具体的な行政サービスの段階になれば、地方自治体が大きく関与してきます。われわれ地方議員は、その中で見えてくる現場の様々な課題を、国政にフィードバックしながら、改善をたゆまないものにしていく責任があります。また、行革については、コスト削減と同時に借金を減らし、増収を図る構造に変えていくというのが基本ですが、そこで大切になるのが「生活者本意」の考え方です。生活者にとって何が本当に必要なものかを精査する必要があります。そして、企業が収益を上げて投資家から評価されるように、行政もアウトプットが重視されなければなりません。生活者からどのように評価されているのか、そこを最大のチェックポイントにしていくべきでしょう。これだけ財政が厳しいわけですから、あれもこれもは叶いません。加戸知事が強調されるように「選択と集中」を徹底するとともに、将来を見据えて自主財源を増やす努力を続け、身の丈にあった県政の運営が重要です。ただし、「選択と集中」の結果、社会的弱者や中小零細企業を切り捨てるようなことがあってはなりません。私は常に自分の立場を社会的弱者に据えながら、行財政改革が「生活者本意」で進むよう、議員としての役割を果たしていきたいと思います。 Q.7 選挙区である松山市・上浮穴郡区の課題については。A.7旧松山市及び旧北条市と、島しょ部の旧中島町と中山間地の久万高原町の間には、明らかに地域間格差が存在します。例えば、久万高原町の高齢化率は41.49%(平成18年4月1日現在、県長寿介護課調べ)で県内市町村でトップであり、限界集落の危機さえ迎えています。若者が職を求めてどんどん町外へ流出する中、基幹産業である農林業を支える人々の高齢化が進行し、後継問題が深刻化しています。この構造は島しょ部でも同じです。選挙中、現地を歩かせてもらって、空き家や空き店舗や耕作放棄地の多さが目につきました。このままでは町の未来の絵は描けないと痛感させられました。では、どうするのか。地域再生の政策は総合的、重層的に考えていく必要がありますが、私は一つの方策として、松山市と久万高原町及び島しょ部が新しい形で連携できないかと考えています。例えば、久万高原町の遊休地を活用してペンション等のショートステイ型施設や食住一体のロングステイ型の住宅を安価に整備し、それを松山市はもちろん全国から呼び込んでいく。また、若い人ならばマイカー通勤も苦ではないでしょうから、安く広い住宅を安価に提供し、大自然と人情あふれる中でのどかに子育てをしてもらう。逆に、コンパクトに生活利便が整った松山市は、お年寄りが暮らしやすい都市です。久万高原町での生活不便を感じている方には、松山市で老後を過ごしてもらいやすいようにする。いわば、田舎のお年寄りと都会の若者をトレードし、それぞれの「生活満足」を高めるとともに、地域に活力を生み出そうというわけです。一つのアイデアですが、具体的な政策として合理性が裏づけられるのであれば検討の余地はあると思います。同じ私の選挙区でありながら、都市部と島しょ部や中山間地には歴然とした格差があるだけに、こうした格差の是正を図ることも、私の政治テーマの重要課題の一つとして大切にしていきたいと思います。