「(略)厚生労働省は今月、公的年金の財政状況をチェックして将来の給付水準の見通しを示す、5年に1度の「財政検証」の結果を公表しました。今朝はその概要についてご報告させて頂きます。
今回の検証で国は、長期の実質経済成長率を4通り想定して試算しました。
過去30年間と同程度の経済成長が続いた場合、現役世代の平均手取り収入と比べた年金受給額の比率、いわゆる所得代替率は、33年後の2057年度に50・4%となりました。この場合、法定の所得代替率「50%以上」は維持されることとなります。
2019年の前回検証では6通りの経済シナリオのうち、経済成長が一定程度進んでも所得代替率は50%を下回りました。
経済の前提が異なり単純比較はできませんが、前回より改善したことは明らかで、年金財政の持続性が向上したと言えます。
その要因は、この5年で女性や高齢者の就労が進み保険料を負担する人数が増えたほか、株価の上昇を背景に年金積立金が増えたためとされます。
この改善の流れを継続し加速させていくことが重要です。
経済成長と十分な年金財源を確保するには、企業による投資拡大や賃上げ、働き方改革による一層の労働参加などが欠かせません。
政府は制度改革の議論を本格化させ、来年の通常国会に関連法改正案を提出する方針ですが、課題も浮き彫りとなりました。
焦点の一つは低年金対策です。
現在40~50歳代の「就職氷河期世代」は、非正規雇用で基礎年金のみの加入が他世代より多く、将来不安を指摘する声が多くの方から聞かれます。
まずは、非正規労働者に対する厚生年金のさらなる適用拡大が求められます。
将来の給付水準を底上げしていくことは極めて重要であり、そのためには企業規模の要件を撤廃する必要があるのではないでしょうか。
また、基礎年金は現役人口の減少や平均余命の伸びに合わせて給付水準を調整する「マクロ経済スライド」が厚生年金より長引く見通しで、水準の低下が懸念されます。
基礎年金と厚生年金、この2つの給付調整の期間を一致させる方策が論点に挙がっています。
こうした点も含め、年金制度の持続性をさらに向上させていくためには、制度を不断に見直し強化していかなくてはなりません。
年金は老後の生活を支える基盤であり、皆様の声をもとに社会の変化に応じた制度改革を進めてまいりたいと思います。
今朝は、国が今月行った公的年金の財政検証の結果についてご報告させて頂きました。今週もどうぞ宜しくお願いいたします。」
- 投稿者
- 木村誉
- 投稿時刻
- 10:06