次に、国立研究開発法人/防災科学技術研究所/総合防災情報センター長の臼田裕一郎氏による講演「地方自治体と防災DX~令和6年能登半島地震を踏まえ~」の主なポイントです。
〇Googleトレンドでの動向をみると、近年“DX”の検索数が急増している。社会の幅広い分野で“DX”の取り組みが急速に進展していることによるものだが、いきなり“DX”をめざしてもなかなかうまくいかないことが多い
〇そもそも“DX”とは“物事のデジタル化”を図り、次いで“個別業務のデジタル化”につなげ、最終的に“デジタル技術で業務全体を変革する”という1つ1つの段階を経て実現が可能となる
〇今日のテーマは“防災DX”だが、今なぜそれが必要なのか。頻発・激甚化する自然災害に対し、従来型の防災では対応しきれない有形無形の深刻な現実があるからだ
〇昨今の大規模災害に対応するためには、標準化された研修・訓練、人材育成プログラムの充実や世界標準に即した災害対応の仕組みの採用など、技術的にも人材的にも“防災DX”による災害対応力を拡充強化していく以外ない
〇2021年9月、デジタル庁が創設された
〇行政のタテ割りを打破する“デジタル改革の司令塔”デジタル庁の下、防災部門における“DX”が進められる中、当センターでは今回の能登半島地震において避難所情報、被災者情報、生活再建支援の3つのステップで被災者支援のDX化に取り組んでいる
【取組事例①】 避難所情報統合システムの構築支援
市町やDMAT、自衛隊等が個別に収集し分散管理していた避難所情報の集約を支援する取り組み等により、避難所情報の一元管理と機関横断での共有を実現した
【取組事例②】 Suicaを活用した避難者情報の把握支援
JR東日本の協力を得て、Suicaを活用した避難者情報把握のソリューションを開発し、避難所での機器設置作業を支援。志賀町の避難所にSuicaを先行配布・活用中のほか、能登町含む5市町で入浴施設の入浴用カードとしてもSuica配布・活用を行っている。その結果、避難者の所在や動きのトラッキング、避難者情報を個別かつ全体的に把握することが可能となった
【取組事例③】 被災者訪問アセスメントのオンライン化支援
避難所、LINE、コールセンター等を通じて被災者の状況を把握するとともに、Suicaを通じて被災者の安否確認をオンラインで行っている
【取組事例④】 被災者データベースの構築支援
県と特に被害が甚大な6市町が保有する各種名簿、Suica活用による把握情報、被災者アクセス情報などを集約・統合管理する被災者データベースの構築を支援・運用した結果、合計10以上のシステム等から被災者情報を名寄せ・統合し、被災者データベースによる各種被災者情報の集約・管理を行う仕組みが構築できた
〇本気で“防災DX”を進めるためには、必要な要素が3つある
〇その1は、“平時の備え”だ。“DX”は準備と段階がなければ起こせない(魔法と手品の関係)。災害時に使用するデータはあらかじめ平時の段階で相互共有・更新するようにしておく
〇その2は、“変革は、まず隗より始めよ”だ。“DX”は変化がないと起こせない。最初に変革できるのは自らであり、実証・訓練・実践を通じて常に見直しを続ける姿勢が大事だ
〇その3は、“連携・連動から「共創」”だ。“DX”は一人では起こせない。まずは“つながる、つなげる”ところから始まり、“産官学で一緒に創る”というのがこれからの“新しい防災のカタチ”だ
〇内閣府では現在、次期総合防災情報システムを構築中だが、その中でデジタル庁は防災分野のデータ連携のためのプラットフォームを構想している。これが完成すれば個々の住民等が災害時に的確な支援が受けられるようになり、まさに“防災DX”に向けた大きな一歩を踏み出すことができる
- 投稿者
- 木村誉
- 投稿時刻
- 22:31