大会2日目の講演から、まずは河野太郎デジタル大臣です。
■「デジタル導入の価値を考える」
講師:河野 太郎(デジタル大臣・衆議院議員)
〇私がかつて「デジタル化」について話をした際、多くの方から、“『モダンタイムス』という映画の中でチャップリンが歯車に挟まれて押し出されていく、あの有名なシーンが頭に浮かんだ”とのリアクションを頂いた
〇ともすると「デジタル化」という言葉には非人間的な冷たいイメージがある。それを払しょくするため、まずは「何のためにデジタル化をするのか」ということを国民の皆様と共有する必要がある
〇今、日本は急速に人口が減っている。毎年80万人以上。鳥取県の人口が毎年ひとつなくなってくスピードだ。若年層の減少幅はさらに大きく、しかも早い。日本の平均年齢は49歳、アジアの国々は20歳代。人口が減りながら社会全体の高齢化が進んでいるのが今の日本社会だ
〇こうした状況の中、高齢者や次世代を担う子どもたちにしっかり寄り添うには、今までと同じやり方では行き詰まってしまう。人間がやらなくてもよいことはロボットやAI等に任せ、人間は人間がやらなければいけないものに集中する必要がある。「デジタル化」は人口減少による衰退から「温もりのある社会」を維持するための手段というふうにご理解頂きたい
〇約15年前、ヨルダンの首都アンマンの難民キャンプを訪問し、大変驚いたことがある。政府が難民個々人の“瞳の虹彩”を認証登録し、その人ごとに口座を作り仮想通貨(ドル)を入金するシステムを構築していた。それぞれ必要物資を市場で購入すると虹彩認証で決済され、口座から引き落としされるというしくみであった。これがもしアナログで何万人分の食糧配給券を印刷・配布していたら、紛失や盗難など混乱は計り知れないものがあっただろう
〇昨年同国を訪れると虹彩認証で医療情報の個人電子カルテまでアクセスできるようになっており、現地の方から“日本はもっと進んでいるのでしょう?”と質問された際には言葉を返すことさえできなかった
〇5/31今朝、参議院にてデジタル関連法案が可決成立した。これでⅰPhoneにマイナンバーカードを搭載することができるようになる。時期的にはおそらく来春となるが、国家資格の取得情報についても順次搭載を進めたい
〇コロナ禍においてオンライン診療を平時にも使えるようにするという規制改革を進めている時、一人の漁師さんから連絡を頂いた。「人間のオンライン診療ができるんだったら、魚もオンライン診療できるようにしてくれ」と。聞いてみると、養殖の魚の病気を見ることができる獣医さんは、非常に数が限られていて、数少ない獣医さんが全国をまわっているのでオンラインで魚の診療ができるようになったらもっと便利になるんだと言われた。なるほどと思って農林水産省に魚のオンライン診療も検討してくれと要望すると、「わかりました、魚のオンライン診療を認めます。ただし初診は対面で行ってください。再診からオンラインでも構いません。」いう回答があった。私は担当者に対して、「いけすの中を泳いでいる魚たちを見て、この魚は初診、この魚は再診と判断できるのならその規制でも構わない。目の前でやってみせてください」と応じると、しばらくして「初診からオンラインでも構いません」という返事が来た。改革にはそれくらい抵抗がつきものというエピソードだ
〇コロナ禍でワクチン担当大臣を務めて感じたのは、首長のリーダーシップで接種率など結果において差が出るということだ。例えば、マイナンバーカードの普及率が都城市では9割を超えている。同市ではマイナンバーカードを“デジタル社会のインフラ”と捉え、書かずに入所が可能な“デジタルケア避難所”や、オンライン資格確認等システム機能を活用し患者の“既往歴”を確認の上搬送する“救急搬送デジタル化”の実証実験を行うなど全市一丸となった取り組みが進められている
〇デジタル人材の育成が地方の課題としてあるが、デジタル庁では地方から人材を受入れ2-3年かけて育成し地方にお返しする取り組みを進めており、都道府県でIT人材を育成・プールし各自治体へ派遣する広島県のような取組みも横展開で広げながら、デジタル人材の育成という地方の課題解決をサポートしている
〇「デジタル化」を進めるうえで重要なのは“誰ひとり取り残さない”こと。それは皆がデジタルスキルを身に着けることではない。スマホを使いこなせる人は“行かない役所”として、行政手続きの9割をスマホで行えるよう進めていく。スマホを使いこなせない人は“書かない役所”として、マイナンバーカードで本人確認を行うとひとつの窓口ですべての手続きが完結するよう勧めていく
〇「デジタル化」を進める事により行政の仕事の質を高め役所の回転を良くしていく、ピラミッドの頂点を高くし底辺を小さくすればその部分に対してより手厚くサポートを行うことができる。デジタル庁としてシステム改修など予算残の部分もあるので、ぜひ各自治体の皆様には積極的に手を挙げて頂き、私もできるだけの支援を行っていく所存だ
- 投稿者
- 木村誉
- 投稿時刻
- 22:51