「原発の廃炉についてお伺いします。
ご案内の通り、東京電力は先月24日、福島第一原発の敷地内にたまった処理水の海洋放出を開始しました。
現在、処理水を保管するタンクは1,000基を超えており、放出しなければ来年2月以降に満杯になる見通しで、今年度はタンク約30基分に相当する約3万1,200トンを4回に分けて放出。
それにより空いたスペースは、燃料デブリの取り出しや保管などをするための敷地に充てられ、政府と東電は今後、放射性物質であるトリチウムを含む処理水の保管タンクを減らしながら、福島復興に向け、全体で約40年にわたる廃炉作業を進めていくことになります。
今回の処理水は、2011年の原発事故で溶け落ちた核燃料、いわゆる“燃料デブリ”の冷却などで生じた汚染水を、多核種除去設備(ALPS)で浄化処理し、大半の放射性物質を取り除いた水を指し、トリチウムだけは除去が難しいため、処理水に海水を混ぜて、濃度を100倍以上に薄め、安全基準を十分に満たした上で、海に放出することとなりました。
これは、WHO世界保健機関の、飲料水におけるトリチウムの濃度基準値の約7分の1に相当し、IAEA国際原子力機関によると、処理水が出す放射線による人体への影響は、国際規制基準値の「1人当たり年間1ミリシーベルト未満」を大きく下回り、グロッシー事務局長は、「ALPS処理水の海洋放出は、国際基準に完全に適合した形で実施され、環境にいかなる害も与えることはないと確信できる」と述べています。
さて、今回の処理水の海洋放出は、あくまでも福島第一原発の廃炉作業の一環ということでありますが、本県におきましても、伊方原発1号機が2017年から、2号機が2021年からそれぞれ約40年をかけ廃炉作業が進められており、長期間、誰も経験したことのない困難に取り組むという点では福島県とも共通しています。
また、福島第一原発の敷地内においてタンクを保管するスペースが満杯になる見通しから今回の処理水海洋放出に至ったように、果たして伊方原発3号機・燃料プールや乾式貯蔵施設において保管する使用済み燃料が満杯になるようなことはないのか、といった不安の声も聞かれます。
現在、国においては、計画通りに処理水の海洋放出が行われているかをモニタリングし、その結果を日々公開するしくみを運用しており、水産庁では魚などへの影響調査を毎日実施しています。
長期にわたり廃炉作業に取り組む上で、私は今回の福島第1原発処理水に関する徹底した情報公開のように、廃炉完了に向けて安全で着実に進捗していることを、県民に対し丁寧に情報発信し続けることが、とりわけ肝要と考えます。
そこで、お伺いします。
まず、本県伊方原発1号機、2号機における廃炉作業の現況はどうか。また、約40年後の廃炉事業完了に向けて、事業者等に対し、どのような取り組みを期待するのか、ご所見をお示しください。
併せて、立地地域の将来を展望する上で、廃炉が地域経済に与える影響等をどのように考えるのか、見解をお聞かせください。」
(防災安全統括部長)
「廃炉の全体工程については、①解体工事準備、②原子炉領域周辺設備解体撤去、③原子炉領域設備等解体撤去、④建家等解体撤去の4つの段階に区分され、現在、1、2号機ともに第1段階の解体工事準備期間にあります。
このうち、1号機では、使用済燃料の3号機使用済燃料プールへの搬出と放射能調査が完了し、タービンなど管理区域外設備の撤去を実施しており、また2号機では、放射能調査や管理区域外設備撤去に着手しているところでございまして、「廃炉作業はいずれも順調」と聞いております。
県といたしましては、今後も、廃炉の実施状況や、第2段階以降の廃止措置計画について、原子力安全専門部会で厳しく審議、確認し、必要な対策を求めるなど、安全かつ確実な廃止措置の実施に万全を期すこととしておりますが、事業者等においては、「えひめ方式」による通報連絡体制の徹底はもとより、事前協議了解の際に県から要請しているとおり、廃止措置期間中の安全確保を大前提に、廃止措置に係る人材確保・育成、低レベル放射性廃棄物の確実な処分、情報公開、技術開発や地域振興対策について、しっかりと取り組んでもらいたいと考えております。」
(経済労働部長)
「伊方原発の廃炉により、関連産業も含めた地域住民の雇用減少や、域外からの関係者の流入減少による宿泊・飲食業の衰退など地域経済への影響が懸念されますことから、県では、四国電力に対しまして、廃炉に係る技術開発研究や人材育成のほか、地元の経済発展や雇用促進などへの対策に特段の配慮を求めるとともに、エネルギー政策を司る国に対しましても、伊方原発における廃炉技術の研究が進むよう取り組むことを要請してまいりました。
県の働きかけの結果、四国電力では、「廃止措置研究に係る検討会」を設け、安全で効率的な廃炉作業に必要となる技術の研究開発等が進められ、これまでに県内ものづくり企業とのマッチングにより、通気性に優れ快適性を改善した防護服や高圧ジェット水に対応した防護服の商品化に成功したほか、防護用全面マスクで使用可能な音声通話装置の開発等にも取り組んでいるところでございます。
廃炉作業は約40年の長きにわたりますことから、原発関連交付金も活用しながら地域が取り組むまちづくりを着実に支援いたしますとともに、廃炉技術と知見がスゴ技企業など高い技術力を有する県内企業のビジネス機会の創出、ひいては地域経済の発展にもつながるよう、産学官一体となってしっかり取り組んでまいりたいと考えております。」
- 投稿者
- 木村誉
- 投稿時刻
- 11:38