「(略)県議会9月定例会は先週、一般会計総額104億1991万円の補正予算が可決成立し、閉会となりました。
今議会では、とりわけ県立高校の再編計画に対して多くの皆様の関心が集まりましたが、本会議をはじめ常任委員会での論戦も含め、私自身、最も衝撃を受けたのが、本県の“人口減少の加速化”という現実でした。
今回の補正予算は、新型コロナ対策、物価高騰対策、防災減災対策の大きく3つの柱からなるものでしたが、
円安やウクライナ危機に伴うエネルギー・物価高騰などの国際的な要因を除けば、いずれも、将来にわたる人材確保と地域の持続可能性に対する懸念に対応するものばかりであり、
それらはすべて、想定を超えたスピードで進む“人口減少”に起因していると痛感させられたのであります。
連日、マスコミで取り上げられた県立高校再編の他にも、
例えば、
ローカル線の存続が懸念される“地域公共交通の確保”、
移住促進や企業誘致など“人口流入の促進と流出抑止”、
あるいは耕作放棄地や空き家、鳥獣被害増加の問題、
ベトナムや中国ECサイトなど“外国市場への販路拡大”、
医療・介護・保育や建設土木分野等での“人材不足対応とそれをカバーするDXの導入”のほか、
県職員の定年が、来年度から2031年度までに65歳に延長される条例の可決を含めて、
これらの施策や事業はすべて、“人口減少”の影響によるものであります。
従って、私たちの地域を持続させるためには、
“人口減少を抑制しながら、縮小状況に応じ整合性の取れた社会のしくみへと抜本的に変えていくこと”が絶対条件であると痛感させられたのです。
もちろん、課題解決には重層的なアプローチが必要となりますが、
1つの視座として、本年6月に閣議決定された内閣府の“男女共同参画白書”を挙げてみたいと思います。
先般、結婚を望まない若者が過去最高になったことがニュースでも取り上げられましたが、その元となるデータがまとめられたのがこの白書です。
その冒頭には、
家族の姿が変化しているにも関わらず、男女間の賃金格差や働き方等の慣行、人々の意識、さまざまな制度等が、依然として昭和時代のままとなっている点を踏まえ、
(死亡年齢最頻値が女性93歳、男性88歳と)文字通り、人生100年時代を迎え、結婚や、家族の姿も生き方も、人生のあり方も、ますます多様化する中にあって、
昭和的な価値や制度から脱却した新たな政策が求められているとの指摘がなされています。
例えば、昭和60年時点では、夫が働き、妻が専業主婦という世帯は936万世帯でしたが、令和3年では458万世帯へと半減以下へと減少し、
逆に共働きの世帯は、昭和60年には718万世帯でしたが、令和3年には1,177万世帯へと1.6倍に増加しています。
また、昭和55年では、夫婦と子ども世帯、夫婦と子どもと祖父母世帯の合計が62%を占めていましたが、令和2年には32.7%へとほぼ半減し、
最も多い世帯は単独世帯で38%と、当時からほぼ倍増する結果となっています。
ということは、大きな方向性として、
“扶養”や“世帯主”といった昭和時代の価値観に基づく諸制度を、“共働き”や“個人”を前提としたしくみへと、抜本的に見直す必要があることをはっきりと示しています。
また、結婚を望まない若者については、女性が20代の14%、30代の25.4%、男性では20代19.3%、30代26.5%で、ざっくりといえば男女とも2割前後といった状況があります。
しかし、その主な理由は男女で全く異なります。
女性で最も多い回答は、
“仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから”、また、“名字・姓が変わるのが嫌・面倒だから”というものに対し、
男性では、“結婚生活を送る経済力がない”、“仕事が不安定だから”という回答が最多でした。
いずれも、その切実さが伝わってまいります。
女性の方は、先輩や周囲の方たちの結婚前後の実際を見ながらそう感じたことも多いのではと思いますが、
だからこそ、出産・子育て支援や働き方改革、また、介護離職の防止や育児と介護のダブルケアに対する支援などが急務であり、
政治には、そうした課題の改善・改革を進め、若い女性の安心に繋げ広げていくことが求められると思います。
男性側では、収入や雇用に関する不安が最も大きく、だからこそ“経済の成長分野への投資”や、賃上げを含む“人への投資”が重要になってまいります。
白書から浮き彫りとなった喫緊かつ多岐にわたる課題の解決に向けて待ったなしの今、政治は結果を出さなければなりません。
求められるのは、抜本的な制度や政策の見直しであり、抜本的に見直された施策を“人口減少のスピードに負けない速度”で推進することだと思います。
冒頭にも述べました通り、本県のさまざまな県政課題の根幹にある“人口減少”を克服するため、
縮小を受入れながら地域を持続させていく新たな社会のしくみを構築するため、
私も研鑽を重ねながら、皆様とともにその答えを見出してまいりたいと思います。今週もどうぞ宜しくお願いいたします。」
- 投稿者
- 木村誉
- 投稿時刻
- 10:19