「(前略)・・県議会では来週から12月定例会が開会となります。目前に控えたこの時期は各議員とも視察や質問準備等で慌しくなるのですが、私も先週は東京を始め各地に赴き政務活動を実施いたしました。
まず、火曜日は、東京で開催された都道府県議会議員研究交流大会に出席。「新時代における地方議会のあり方」と題した基調講演の後、5つの分科会に分かれ、私は「広域観光」をテーマとする分科会に参加いたしました。
また、金曜日は「ひきこもり問題について考える」をテーマとした第57回愛媛県精神保健福祉大会が松山市内で開催され、「8050問題」、「正しい不登校のやり方」と題した2つの基調講演を拝聴したのですが、実は、分野はそれぞれ異なりますが、講演を通して何かしら共通する“現代社会が抱える根っこ”みたいなものが見えてくる気がいたしましたので、今朝はこのことについてご報告したいと思います。
まず、中央大学・山田昌弘教授の「8050問題」です。
ご専門の「社会学」の立場から、現代社会について「戦後からバブル経済ピークを迎える1990年頃の価値観と今の価値観は全く異なり、仕事や結婚といった“将来に対する希望に著しい格差が生じた社会”に変化している」と指摘。その変化に対処できないままでいる現実に対して強い警鐘が鳴らされました。
そして、社会学的な検証の上から、格差という変化を生じさせた断層は1975年あたりにあると考えられ、その頃生まれた現在40代半ば前後の人々は、“希望格差社会”に直面する初めての世代であり、今大きな社会現象となっている「8050問題」の当事者に他ならないと述べられました。
例えば、かつては就職も結婚も、望めばいつかできたし、臨終のことも、身内で何とかするのが当たり前でありました。
しかし今は、男女とも半数前後が、望んでも正社員になれない、結婚できない、最後を看取る人がいない、あたかも「いす取りゲーム」のように生き辛い“希望格差社会”となり、雇用の構造や家族のあり方、社会保障といったこれまでの社会制度を根本的に変えていくことが必要、との指摘でありました。
そうした社会の変化について“はっきりと”気づかされたのが、「正しい不登校のやり方」と題した小幡和輝さんの講演でした。
小幡さんは、小学校の頃から約10年間不登校を経験しながらも、高校時代に起業し世界経済フォーラム(ダボス会議)が認定する“世界の若手リーダー”に選出された25歳の青年です。
彼は、自らの不登校、ひきこもり体験を振り返りながら、「子どもたちや若者の価値観の変化に現代社会は対応できておらず、世代間で著しいギャップが存在するため、多くの子どもが苦しんでいる」と指摘します。
例えば、学校で、
「勉強やスポーツは評価されるが、ゲームのテクニックは評価されない。」
「囲碁や将棋は奨励されるが、eスポーツはそもそも認知すらされていない。」
「将来の夢が歌手なら背中を押されるが、YouTuberなら怪訝な受け止めをされる。」
いずれも前者が“これまでの価値”で、後者が“今の価値”です。
小幡さんは、これまでの学校の評価だけでは輝けない子どもたちに対して、
「学校に行く意味は何か」ということをちゃんと言葉で定義できる社会にしなければならないし、
子どもたちが求めるのは「自分たちの輝ける場所を見つけられるような社会」と訴えられました。
私は旧世代ではありますが、すごく腑に落ちた気がしました。
そして、小幡さんの言う「世代間ギャップ」と山田教授の言う「希望格差」は通底していて、
さらに、駒澤大学・大山礼子教授の「新時代における地方議会のあり方」と題した講演の基調もそこに響きあっているなぁ、と感じたのです。
大山教授は冒頭で、「今、地方議会には“議会不信”と“なり手不足”という2つの暗雲が立ち込め、存在理由さえ問われるような深刻な事態」と指摘し、
「どうすれば有権者から期待と信頼を取り戻せるか、議会自らが答を見出すことが重要」と述べられました。
確かに、近年の地方議会選挙(県議選・市町議選)を見ておりますと、無投票当選や低投票率ということが毎回大きな問題となっています。
「投票なくして、あるいは有権者の2割や3割の投票で、本当に住民代表といえるのか?」、
「一部の人たちによるいつもの当選者に偏っていて、議員個々への興味や関心がわかない」
そうした辛らつなお声を毎回のように頂きますが、残念ながらこれは正に、有権者の心情と乖離した地方議会の現在地といわざるをえません。
私も地方議員の1人として“果たしてどうすれば、議会として有権者の期待と信頼を取り戻せるか?”思索をめぐらせる中、
今回、年齢も分野も全く異なるお3方の講演に通底するものの中に、
言い換えますと、「ギャップ」や「格差」や「乖離」という断層をどう克服すべきか、そこにこそ現代社会が解決すべき根本の課題があり、
「(これまでと異なる)新たに台頭してきた多様な価値観」にあらゆる次元で「社会の制度をアジャストしていくこと」が課題解決への道筋である、そうした確信を深めさせて頂きました。
今回得た貴重な知見を県政に反映できますよう、1つでも具体的なカタチにできますよう全力で取り組んでまいります。今週もどうぞ宜しくお願いいたします。」
- 投稿者
- 木村誉
- 投稿時刻
- 11:54